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【リサーチ初心者向け】調査会社への“オリエン”のポイントを解説

伝達漏れや認識のズレが、迷走につながることも…

調査会社に調査を依頼する際に欠かせないのがオリエンです。オリエンとは、調査の目的や背景、確認したいことなどを、依頼主から調査会社に伝える最初のステップ。いわば調査の“出発点”です。

オリエンで伝える内容が曖昧なままだと、どれだけ丁寧に調査を行っても、得られる結果が意図とズレてしまう恐れがあります。一方で、オリエンがしっかりしていれば、企業と調査会社が同じ方向を見据えて、調査をスムーズに進行できるようになります。まさに「オリエンの質が、調査の質を決める」といっても過言ではありません。

とはいえ、リサーチの経験が少ない方にとっては「そもそも何をどう伝えればよいのか分からない…」という不安もあるのではないでしょうか。そこで今回は、アイディエーション代表・白石が、オリエンで伝えるべき6つのポイントについて、実務目線で解説しました。

オリエンで伝えるべき6つのポイント

(1)調査背景と目的

まずは「なぜこの調査をやるのか?」をしっかり共有することが大切です。たとえば「ユーザーの利用実態を知りたい」といった理由だけでなく、サービスの現状や課題感を具体的に伝えると、調査の方向性がぐっと明確になります。

NDA(秘密保持契約)を結んでいる前提であれば、社内で出ている仮説や競合の状況、売上の動き、ターゲット像などもできるだけ開示しましょう。そうすることで調査会社側も、より精度の高い設計ができるようになります。

さらに「集めたデータをどう活用する予定なのか」まで伝えるとベストです。意思決定に使うのか、上司への説明材料なのか、具体的な施策づくりなのか…。目的が明確であればあるほど、調査結果の解釈もブレにくくなります。

(2)調査対象・ターゲット

次に大事なのは「誰に、何を聞くか」をはっきりさせることです。年齢や性別などの基本属性だけでなく、「その商品やサービスと接点があるか」「どれくらい好きか」など、調査の目的に合った条件まで踏み込んで設定すると、結果の精度がぐっと上がります。

また、参加者を絞り込むための“スクリーニング条件”も、目的から逆算して考えることがポイント。たとえば「オシャレな人」という曖昧な表現ではなく、「月にいくらファッションにお金を使っているか」「どんなブランドを購入しているか」といった行動や数値で定義するのがおすすめです。

社内で作ったペルソナはイメージを共有するには便利ですが、そのまま定量調査の条件に使うとズレることも多いもの。インタビューなどの定性調査では参考にしつつ、アンケートのような定量調査では観察できる条件に置き換えると安心です。

(3)調査内容(知りたいこと・聞きたいこと)の洗い出し

次にやるべきなのは、「知りたいこと」をざっと書き出してみることです。この時点で、無理に完成された質問票をつくる必要はありません。メモ程度でいいので、思いつくままに箇条書きしてみましょう。

そのうえで、「なぜそれを知りたいのか(活用意図)」もセットで伝えると、調査会社のほうで目的と照らし合わせながら内容を具体化・整理してくれます。

書き出す量が多くても大丈夫です。あとで設計の段階で優先順位をつけたり、似たものを統合したりできます。まずは頭の中にある疑問を、“全部出す”イメージで進めるのがおすすめです。

(4)調査手法の希望

次に考えたいのは、「どんな手法で調査するか」です。目的に合わせて、アンケート(定量調査)、インタビュー(定性調査)、訪問調査、ワークショップなど、いろいろな選択肢があります。

たとえば、割合や普及度といった“数値での検証”が必要ならアンケートがおすすめです。一方で、ターゲット像を深掘りしたいときは、インタビューやワークショップを組み合わせてペルソナをつくるのが有効です。

「どれを選んだらいいかわからない…」という場合は、調査の背景や目的をそのまま伝えて、調査会社に提案してもらえば大丈夫です。加えて、社内事情(例:社内の意思決定においては、数値的なファクトを重視する…など)を共有しておくと、よりスムーズに最適な方法を選ぶことができます。

(5)予算と調査スペック

調査の設計を考えるうえで欠かせないのが「予算」と「調査スペック(サンプルサイズ、設問数、回収割付、インタビュー人数など)」のバランスです。この2つは連動しているので、非現実的な組み合わせをそのまま実施することはできません。

もし予算を動かせない場合は、「予算」と「やりたいこと」をセットで伝えるのがおすすめ。調査会社が、その条件で実現できる最適なプランを設計してくれます。

また、社内の決裁上限(例:「自分の裁量で動かせる予算は100万円まで」「上司決裁で300万円まで」など)を共有しておくと、ライトな案とフルプランの両方を提案してもらえるので、検討がスムーズになります。

(6)スケジュールと活用目的

最後に大事なのが「いつまでに、どんな形で成果物が必要か」を具体的に伝えることです。

たとえば「速報値だけ先にほしい」「抜粋のサマリーがほしい」「フルレポートや報告会まで依頼したい」など、必要なアウトプットを明確にしましょう。

さらに、「その締切の背景」も共有しておくとベストです。上司への報告、部署全体の会議、施策キックオフ…など目的がわかれば、調査会社側も速報対応にするか、完全版を用意するかなど、粒度を調整しやすくなります。

もしスケジュールがどうしても厳しい場合でも大丈夫です。調査会社から「段階的に速報を出して、あとから完全版を納品する」など、現実的な代替案を出してもらえることもあります。

オリエンのサンプルシートを作成しました!

オリエンは調査の“出発点”。オリエンをしっかり行うことは、調査の質を高めるだけでなく、限られた時間やコストを無駄にしないための最初の一歩。ぜひ今回の6つのポイントを意識しながら、調査会社とのコミュニケーションを進めてみてください。 また、今回紹介した6つのポイントを網羅したオリエンのサンプルシートも作成しました。実際にオリエンシートを作成する際の参考にしていただけたら幸いです。

オリエンのサンプルシート

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