【リサーチ初心者向け】アンケート調査票作成における原則と注意点

設問や選択肢、“なんとなく”で決めてしまっていませんか?
アンケート調査は、生活者の意識や行動を定量的に把握し、仮説の検証や意思決定に役立てるための代表的なリサーチ手法です。マーケティングリサーチの中でも最も身近で、近年は『Googleフォーム』などのツールを使って、誰でも手軽に実施できるようになりました。
一方で、設計が不十分なままアンケートを行ってしまうと、せっかく集めたデータが分析に活かせなかったり、回答者が途中で離脱してしまうといった課題も生じます。
そこで今回は、アンケート調査票作成の基本をテーマに、調査票における基本原則やNGな質問文の例を交えながら、効果的なアンケート調査を実施するためのポイントをアイディエーション代表・白石が解説しました。
調査票設計は“やり直しが効かない”
アンケート調査は、実施後に修正ができない「一発勝負」。そのため、アンケートを配信する前に質問文や回答選択肢の内容をしっかりと精査することが大切です。アイディエーションでアンケート調査票を作成する際には、以下の3つを基本原則としています。
(1)調査の目的と趣旨を明確にする
「何を知りたいのか」「その結果をどう使いたいのか」。この2点を明確にしないまま設問を作ると、質問が散漫になり、分析しても結論が出ない調査になります。「既存顧客の再購入意向を高めるために、サービスの改善点を把握したい」といったレベルまで具体化することが理想です。
(2)対象者の限界を考慮する
アンケートに答えるのは研究者ではなく、一般の生活者です。専門用語や複雑な質問が多いと「よくわからないから適当に答える」という事態になりかねません。すべての対象者が“ストレスなく答えられる設計”を目指すことが大切です。
(3)質問の順番を意識する
回答者の思考の流れに沿って設問を配置します。たとえば、「認知→利用実態→製品評価→要望」のように、自然な順番で聞くことで、回答者がスムーズに考えを整理しながら回答できます。順序が逆転すると、先に提示された情報に影響を受け、回答が偏る(=バイアス)原因にもなります。

質問文作成の鉄則は「わかりやすく・ひとつずつ」
質問文を作るときは、答える人の立場に立つことが基本です。そのうえで、次の6つのポイントを意識するだけでも、アンケートの精度は大きく変わります。
・難しい言葉を使わない。
専門用語や業界略語(例:MNOなど)は、回答者には伝わりません。誰が読んでも理解できる平易な言葉を使いましょう。
・二重否定を避ける。
「〜でないと思いませんか?」のような文章は混乱を招きます。質問はできるだけ肯定文で書き、回答も「はい/いいえ」でスムーズに選べる形にします。
・曖昧さをなくす。
「同居家族の人数」などは、「自分を含めて回答してください」と注釈を加えることで、回答者ごとの解釈のズレを防げます。
・1問につき1つの要素を聞く。
「このジュースは“おいしくて健康に良い”と思いますか?」のような“ダブルバーレル質問”は、どちらの意味で答えたかわからなくなります。要素を分けて質問しましょう。
・誘導的な表現を避ける。
「今話題のこの商品に興味がありますか?」という質問では、すでにポジティブな印象を与えてしまいます。「この商品についてどう思いますか?」と中立的に聞くことが重要です。
・“あなた自身”に答えてもらう。
「一般的には〜」ではなく、「あなたはどう思いますか?」と明確に伝えることで、よりリアルな意見を得ることができます。
また、アンケート調査票を作成した後には、必ず第三者に見てもらうことをオススメします。自分では完璧に思えても、他人の目で見ると「長い」「難しい」「答えづらい」といった欠点が見えてくるものです。AIなどのツールを使ってチェックするのも有効です。
選択肢設計で“答えやすさ”を整える
選択肢設計の目的は、回答者が迷わず答えられる状態をつくることです。たとえば、自分に当てはまる選択肢を選ぶ際に「その他」の回答が多いような場合は、重要とされる選択肢が漏れていたり、選択肢がわかりにくかった可能性が高いと言えます。
そのため、次のポイントを押さえながら選択肢を設計していきましょう、
・選択肢の項目に抜け漏れがないか
最初に考えうる選択肢を出し切ったうえで、重複する項目や影響が小さい項目を整理します。一方で、選択肢が多すぎると回答者が疲れてしまい、途中離脱の原因にもなるため、最大で20個くらいに収めましょう。

・「その他」や「当てはまるものはない」を必ず用意する
どの選択肢にも当てはまらない人のための逃げ道を用意することで、誤回答を防げます。特に複数選択式では、漏れが出やすい項目です。
・似た意味の選択肢を整理する
言葉が違っても実質的に同じ意味の選択肢があると、回答データが分散し、傾向が分析しづらくなります。近い意味の言葉はまとめてシンプルにしましょう。
※例:「旬な」と「流行っている」。「ファミリー向け」と「子連れ向け」
・数値の範囲を正確に区切る
たとえば、「あなたの年収は?」という質問に対して、「400万円以下」「400万円〜500万円以下」という選択肢が並んでいると、400万円の人はどちらを選ぶべきか迷います。「〜以上・以下」「未満」といった表現を使う際は、範囲を明確に設定することが重要です。
実際にありがちなNG例は動画にて紹介
アンケート調査は、生活者の声を数値として可視化できる強力なリサーチ手法です。しかし、設問設計や選択肢づくりを“なんとなく”で進めてしまうと、集めたデータが意図した分析に使えなかったり、回答が偏ってしまうこともあります。
だからこそ、調査の目的を明確にし、回答者が迷わず答えられる設問を設計することが欠かせません。今回紹介した原則を意識することで、アンケートの精度を高め、実務に活かせる示唆を導き出すことができるはずです。
動画では、実際にありがちなNG設問や誤った選択肢の例を取り上げながら、より実践的な視点で解説しています。これからアンケートを設計する方や、設問の質を見直したい方は、ぜひ併せてチェックしてみてください。
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